ブラック企業を辞めたいのに動けない理由と、最初の一歩の踏み出し方

「辞めたい」と思いながら、もう何ヶ月も動けていない——そんな状態にある人に、まず伝えたいことがあります。

それは、「あなたが弱いわけではない」ということです。

私自身、入社2年目から毎月100時間近いサービス残業が続く職場にいながら、なかなか動き出せませんでした。
転職サイトに登録はしましたが、何をすればいいのかわからず、結局ページを眺めて閉じる日々が続きました。

この記事では、「辞めたいのに動けない」本当の理由と、その突破口になる最初の一歩を、ブラック企業に10年勤めた経験をもとに解説します。
転職をお勧めする記事ではありません。まず「自分の状態を知る」ところから始めていただければと思います。

目次

辞めたいのに動けないのは、あなたが弱いからじゃない

辞めたいのに動けないのは、あなたが弱いからじゃない

「甘えだ」と感じてしまう心理の正体

「辞めたいなんて甘えじゃないか」と思い込んでいる人は多いです。
特にブラック企業で何年もがんばってきた方ほど、その傾向が強くなります。

なぜそう感じてしまうのでしょうか。
それは、職場が「辛くて当然」「我慢が美徳」という空気を、長い時間をかけて植えつけてきたからです。

上司に「このくらいで音を上げるな」と言われ続けると、自分の感覚がおかしくなってきます。
月60時間の残業でも「これが普通だ」と感じるようになり、辞めたいと思う自分を責め始めてしまいます。

厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスになっていると感じる事柄がある労働者の割合は68.3%にのぼります(出典:厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」)。
7割近い働く方が何らかの強いストレスを感じています。それが今の日本の職場の現実です。

「甘え」ではなく、限界まで消耗した状態で、それでも「動かなければ」と追い詰められているのが実態です。
まずその認識を変えることが、突破口の第一歩になります。

真面目な人ほどハマりやすい「申し訳ない」という罠

動けない理由として、「自分が辞めたら周りに迷惑をかける」という気持ちを挙げる人が非常に多いです。
これもまた、真面目さゆえに起こる心理的な罠です。

特に職場の人員が少なく、退職者が続いている環境ではこの感覚は強くなります。
「自分がいなくなったら仕事が回らない」「後輩に申し訳ない」という思いが、行動にブレーキをかけます。

ただ、冷静に考えてみてください。
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約であれば、労働者はいつでも退職の申し入れができ、申し入れから2週間で雇用関係は終了すると定められています。
退職はあなたに認められた権利であり、法的に「申し訳ない」と思う必要はありません。

人員が減っても会社のフォローが足りないのは、会社の経営判断の問題です。
あなたが背負うべき責任ではありません。
職場の人手不足を理由に、自分の人生の選択肢を狭めてしまうのは避けていただきたいと思います。

消耗が続くほど、動く体力まで奪われていく

「転職しよう」と思いながら動けない人のもう一つの理由が、「そもそも動く余力がない」というものです。
これは意志の問題ではなく、身体・精神の消耗によるものです。

毎日残業で帰宅が深夜、休日も疲労回復だけで終わる——そんな状態で「さあ転職活動をしよう」と思えるはずがありません。
疲れ果てた脳は、変化を恐れ、現状維持を選ぼうとします。これは心理学でも確認されている反応です。

そして、この状態を放置することには深刻なリスクがあります。
消耗が一定のラインを超えると、うつ・適応障害などのメンタルヘルス疾患に発展することがあります
その場合、転職活動どころか日常生活そのものが困難になります。
「まだ動けている今」に行動することが、選択肢を守ることにもつながります。

日本労働調査組合の調査(2021年9月)では、現在の職場環境を「辞めたい」と感じる方のうち、68.7%が「仕事量・残業の多さ」、77.8%が「給与・待遇の不満」を理由に挙げています(出典:PR TIMES「日本労働調査組合 調査レポート」2021年9月)。
疲弊している原因は「甘え」ではなく、職場の構造的な問題であることが多いです。

📌 今日できる一歩
今夜、「今の自分のストレスの原因」を3つだけ紙に書き出してみてください。
「甘えかどうか」ではなく、「何時間働いているか」「何にストレスを感じているか」という事実だけを書けばOKです。

まず「動けない自分の状態」を言語化してみる

「辞めたい理由」を紙に書き出すことが最初の一歩

転職サイトに登録する前に、まずすべきことがあります。
それは「自分が今どういう状態にあるか」を言語化することです。

頭の中にある「辞めたい」という気持ちは、そのままでは漠然としています。
残業が辛いのか、上司が嫌いなのか、仕事内容が合わないのか、給料が低いのか。
整理されていない感情のまま動き出すと、方向が定まらず途中で止まりやすくなります。

まずA4の紙1枚でいいです。
「今の職場で嫌だと感じていることを、思いつく限り書き出す」という作業から始めてみてください。

「残業が多い」「給料が低い」「上司に怒鳴られる」「休日出勤が多い」「評価されない」……
どんな些細なことでも構いません。
書き出すことで、自分が何に一番疲弊しているかが見えてきます。

私が実際にやったとき、書き出してみて初めて「自分は仕事の内容より、上司との関係性と残業時間が最大のストレスだ」とわかりました。
それがわかることで、次に何を考えるべきかが少し見えてきました。

「次の職場が怖い」という気持ちも、正直に書き出す

「次の職場がもっと悪かったらどうしよう」
この不安は、転職を考えている方のほぼ全員が持っている感覚です。
そしてこれが、踏み出せない大きな原因のひとつになっています。

この不安も、頭の中に閉じ込めたままにしないことが重要です。
「転職先が今より悪かったらどうしよう」という怖さも、紙に書き出してみてください。

「また残業が多いところに行ったら困る」「人間関係がうまくいかなかったら」「給料が下がったら生活できない」……
書き出すことで、自分が「次に求めていること・避けたいこと」の輪郭が見えてきます。

この作業は、転職活動を始める・始めないという判断とは切り離して行うことができます。
まず「自分が何を怖いと感じているか」を知るためだけの作業として取り組んでみてください。

「絶対に嫌なこと」のリストが自己分析の入り口になる

自己分析というと「自分の強みを見つける」というイメージがあるかもしれません。
しかし、疲弊しているときに「強み」を考えるのはなかなか難しいものです。

そんなときは、「やりたいこと」ではなく「絶対に嫌なこと」から考え始めるのがおすすめです。

「サービス残業は嫌」「休日出勤は許容できない」「怒鳴る上司のいる職場はNG」「ノルマが厳しすぎる環境は合わない」……
「したくないこと」をリストアップするだけで、自分の価値観や優先順位が浮かび上がってきます。

私自身、「したくないこと」を書き出すところから始めたことで、「自分は給料より時間と精神的な安定を優先したい」とわかりました。
それが次の職場選びの軸になりました。

「したいこと」はまだわからなくて大丈夫です。
まず「したくないこと」を明確にすることが、自己分析の入り口になります。

📌 今日できる一歩
今夜5分だけ時間をとって、「辞めたい理由」「転職で怖いこと」「絶対に嫌なこと」の3つをそれぞれ思いつく限り書き出してみてください。
うまく書けなくて構いません。書き出すこと自体が、状況を整理する第一歩になります。

自己分析は、転職するかどうかを決めるためにも使える

自己分析は、転職するかどうかを決めるためにも使える

「辞めていい状況なのか」を自分で判断するために

仕事が辛いからといって、全員が今すぐ転職すべきかというと、そうではありません。
自己分析のもう一つの役割は、「自分は本当に転職すべき状況にあるのか」を冷静に判断することです。

次の3つの観点を自分に当てはめて考えてみてください。

  • 残業時間:月45時間を超える残業が恒常化している場合、「時間外労働の上限規制」(労働基準法第36条の6)に違反している可能性があります。まず事実として自分の労働時間を把握してみてください。
  • ハラスメント:上司や同僚から継続的に侮辱・叱責・無視などの扱いを受けている場合、それはハラスメントに該当する可能性が高いです。「自分が悪い」と思い込む必要はありません。
  • 体調への影響:「休日も気持ちが回復しない」「朝が来るたびに職場に行きたくない感覚が強い」「食欲がない・眠れない」などの症状が続いている場合、メンタルヘルスへの影響が出始めているサインかもしれません。

この3点のうち1つでも当てはまるなら、「辛いのは自分が弱いから」ではなく、「環境に問題がある」可能性が高いです。
転職するかどうかの判断は、自己分析を進めてからで十分です。
まずは「自分の状況を正しく把握する」ことが先です。

ブラック企業の見分け方・特徴については、こちらの記事も参考にしてください。
ブラック企業の特徴と見分け方|元社員が体験で語る12のサイン

社会人を経験してからの自己分析は、就活時代とまるで違う

大学の就活で「自己分析をした」という人も多いでしょう。
しかし、社会人として数年の経験を積んだあとにする自己分析は、まったく別物です。

就活の自己分析は「自分はどんな人間か」を探るものでした。
社会人経験後の自己分析は、「自分は実際に何が好きで何が嫌いか」「どんな仕事環境でパフォーマンスが上がるか」「何があれば仕事を続けられるか」という、より具体的・実践的な問いに答えられます。

「向いていると思ったけど実際はキツかった仕事」
「苦手だと思っていたけど意外とこなせた経験」
「評価されたことよりも、自分が達成感を感じた仕事」
これらを書き出していくことで、自分のリアルな価値観が見えてきます。

なお、自己分析の具体的なやり方・手順については、別の記事で詳しく解説する予定です。
今は「社会人経験後の自己分析は就活時代と深さが違う」という認識を持つだけで十分です。

軸なしで動いた私が転職サイトで止まった話(失敗談)

私の失敗を正直にお伝えします。

最初に「辞めたい」と思い始めた入社2年目のとき、とりあえず転職サイトに登録しました。
求人票を眺めてはみましたが、何をどう判断すればいいかまったくわかりませんでした。

「給料は今より少し高い」「残業少なめ」「未経験歓迎」……
それぞれの条件は悪くないのですが、どれを優先すべきかが自分の中で決まっていませんでした。

結果、「なんとなく気になる求人をブックマーク」という作業だけで時間が過ぎていき、転職活動は一歩も進みませんでした。
半年後には転職サイトへのログインすら面倒になって、アカウントが休眠状態になってしまいました。

なぜそうなったのか。
自分が「何を重視しているか」という軸を持たないまま動き出したからです。

自己分析を先にやっておけば、「残業時間が最優先」「次点で通勤時間」という軸があったはずです。
その軸があれば、求人票のどこを見るべきかが自然と決まります。

最終的に転職を成功させたときは、サービス残業が月100時間から10時間以下に減り、年収も50万円アップしました。
本格的に動き始めてから内定まで2〜3ヶ月で済んだのも、事前に自分の軸を整理していたからだと思います。

📌 今日できる一歩
「残業時間・ハラスメント・体調」の3点について、自分の現状をYES/NOでメモしてみてください。
それが今の状況を客観的に見る最初の材料になります。

今日できる「最初の一歩」は思っているより小さくていい

まず紙に書く。それだけでいい

転職活動を始めることは、今すぐしなくていいです。
転職エージェントに登録することも、今すぐしなくていいです。

まず今日できることは、「紙に書く」——それだけです。

辞めたい理由、次の職場への不安、絶対に嫌なこと、転職の軸——
これらを書き出すだけで、頭の中の「もやもや」が少し整理されます。
整理されると、次に何をすればいいかが自然と見えてきます。

「何を書いたらいいかわからない」という人は、まず「今日一番しんどかったこと」を1行書くだけでも構いません。
「また今日も残業で22時に帰った」「上司に怒鳴られた」「休憩が取れなかった」——それだけでいいです。
その積み重ねが、自分の状況を客観的に見るための材料になります。

「本当にブラック企業なのか」を先に確認しておく

転職を考える前に、もう一つ確認しておきたいことがあります。
それは「今の職場は本当にブラック企業なのか」という点です。

「自分の職場がブラックかどうかわからない」という方は意外と多いです。
「どこに行っても同じじゃないか」「これが普通だと思っていた」という声もよく聞きます。

「ブラック企業の基準を知っているかどうか」は、判断の精度を大きく変えます。
基準を知らないまま「なんとなくきつい」という感覚だけで転職すると、次の職場選びも感覚頼りになりやすいです。
基準を知った上で「やはりブラックだ」と確認することで、転職の動機が明確になり、次の職場選びの軸も定まりやすくなります。

「でも、自分の職場はそこまでひどくないかもしれない」と感じている方もいるかもしれません。
それはそれで重要な気づきです。
「ブラックではないけれど、自分に合わない職場」と「ブラック企業」では、取るべき対応が変わります。
前者なら、職場内での立ち回り改善や部署異動という選択肢もあり得ます。
だからこそ、まず「自分の職場の実態を正確に把握する」ことが重要です。

ブラック企業の特徴・見分け方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まずは自分の職場と照らし合わせてみてください。
ブラック企業の特徴と見分け方|元社員が体験で語る12のサイン

📌 今日できる一歩
スマホのメモアプリを開いて、「今日一番しんどかったこと」を1行書いてみてください。
それだけで構いません。書くことが、動き出す最初の一歩になります。

動けない自分を責めるより、まず「知る」ことから始める

「辞めたいのに動けない」のは、あなたが弱いからでも甘えているからでもありません。
消耗しながら、それでも真面目に続けてきた結果として、動く余力が残っていない状態です。

そこからの最初の一歩は、転職サイトへの登録でも履歴書の作成でもありません。
「今の自分はどういう状態にあるのか」を言語化することです。

辞めたい理由を書く。
不安を書く。
嫌なことを書く。
その積み重ねが、「自己分析」という次のステップへの橋渡しになります。

転職するかどうかは、その後で判断すれば十分です。
今日は「知る」ことから始めましょう。

転職活動を実際に始めると決めたとき、何から準備すればいいかについては、こちらの記事を参考にしてください。
ブラック企業から転職を成功させる|在職中からできる5つの準備

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