なぜなぜ分析のコツ|不良の根本原因を特定し再発を止める進め方

困った表情で是正処置報告書を書く若手作業者に、経験者の男性が隣で優しく説明している工場事務所の場面

「不良のなぜなぜ分析をやっているのに、なぜか似たような不良がまた発生する」——品質管理の現場で、そんな手応えのなさを感じていませんか。
是正処置報告書はきちんと発行している。
原因も対策も書いてある。
それでも数か月後にまた同じような不良が出る。

原因は、なぜなぜ分析の「コツ」を外しているからかもしれません。
この記事では、ブラック企業で10年品質管理をやり、中国・東南アジアの工場でベンダー管理・指導をしてきた経験者が、不良の根本原因を特定して再発を止めるなぜなぜ分析のコツを、具体例とともに正直に解説します。

目次

是正処置報告書を出しても不良が再発する2つの落とし穴

不良が発生したとき、多くの会社は是正処置報告書を発行して、原因と対策を検討します。
それ自体はまったく間違っていません。
発生した問題の原因を突き止め、その原因に対する対策を立てて再発を防ぐ——品質管理の基本です。

ところが、報告書を出しているのに不良が止まらない会社には、たいてい次の2つのどちらか(あるいは両方)が起きています。

落とし穴何が起きているか
①運用の形骸化報告書を「書くこと」が目的になり、原因究明が二の次になっている
②原因と対策のズレ原因の掘り下げが浅く、対策が的外れになっている

落とし穴①:報告書が「ISO9001のため」になっている

よくあるのが、ISO9001を取得・更新するために記録が必要で、その帳尻合わせとして是正処置報告書を書いているケースです。
この場合、報告書を書く目的は問題解決ではなく「ISO9001対策」になっています。

本来、ISO9001の目的は品質マネジメントシステムを構築し、安定した品質の生産体制を維持することにあります。
そのためにPDCAサイクルを回して、よりよい製品・サービスを提供し続ける——それが狙いです。ISO9001:2015の箇条10.2「不適合及び是正処置」でも、不適合の根本原因を除去する恒久対策が求められています。

ところが目的が「更新のため」にすり替わると、原因や対策の中身はどうでもよくなります。
「完成した報告書」さえあれば更新という目的は達成されてしまうからです。
これでは何枚書いても不良は減りません。

落とし穴②:原因と対策がそもそも間違っている

もうひとつが、原因と対策の検討が不足しているケースです。
報告書の体裁は整っていて、原因と対策が一見つながっているように見える。
でも、肝心の原因の掘り下げが浅いと、対策はピントを外します。

厚生労働省の分析でも、労働災害の原因の94.7%は「不安全な行動」や「不安全な状態」に起因するとされています(厚生労働省 職場のあんぜんサイト「不安全行動」)。
つまり多くのトラブルは「人」と「仕組み」の両面に原因があり、片方だけ見ても再発は止まらないということです。

この「原因の掘り下げ」を助けてくれるのが、これから紹介するなぜなぜ分析です。

📌 今日できる一歩
直近で出した是正処置報告書を1枚開き、「これは問題を解決するために書いたか/更新や提出のために書いたか」を自問してみましょう。
後者だと感じたら、それが再発の出発点です。

なぜなぜ分析とは?「なぜ」を繰り返して根本原因にたどり着く手法

なぜなぜ分析とは、発生した問題に対して「なぜ?」「なぜ?」と繰り返し問いかけ、根本原因(真因)にたどり着くための手法です。
トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏が、著書『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社)で「なぜを5回繰り返す」と説いたことで広く知られるようになりました。

ただし「5回」はあくまで目安です。
3回で真因に届くこともあれば、7回必要なこともあります。
回数をこなすことではなく、「もうこれ以上さかのぼれない仕組みの原因」に届くことがゴールです。

「発生原因」と「流出原因」を分けて考える

なぜなぜ分析でつまずく人の多くが、原因をひとまとめにしています。
品質管理では、原因を必ず「発生原因」と「流出原因」の2つに分けるのがコツです。

種類意味問いの方向
発生原因なぜ不良が「作られた」のかなぜ間違いが起きたのか?
流出原因なぜ不良が「流出した(出荷された)」のかなぜ途中で気づけなかったのか?

不良が作られたこと(発生)と、それが検査をすり抜けて客先に届いたこと(流出)は、別の問題です。
発生だけ対策しても検査の穴は残りますし、流出だけ対策しても不良は作られ続けます。
両方をなぜなぜで掘ることで、はじめて再発が止まります。

📌 今日できる一歩
手元の不良案件をひとつ選び、「なぜ作られたか(発生)」と「なぜ気づけなかったか(流出)」の2列に紙を分けて、思いつくまま書き出してみましょう。
分けるだけで見え方が変わります。

【具体例】部品の取り違えで学ぶ、ダメな分析と正しい分析

言葉だけだと分かりづらいので、具体例で見てみましょう。
「本来使うべき部品を取り違え、気づかずに出荷。客先からのクレームの電話で発覚した」というケースです。

ダメな例:「忙しかったから」で止まる分析

現場で検討した結果、こんな報告書が出てきたとします。

・原因:作業当日は忙しく、不注意で間違ってしまった
・対策:組立前にダブルチェックを導入し、ミスが発生しないようにする

一見それらしく見えますが、これはダメな例です。
「忙しかったから」という原因には、疑問が次々わいてきます。

なぜ忙しかったのか。
忙しくなければミスしなかったのか。
そもそもなぜ違う部品が作業台にあったのか。
誰が持ってきて、どんなチェックをしたのか。
作業前・作業後に確認するルールはあったのか。

「忙しかったから」では真因にたどり着けません。
そして「ダブルチェック」も、なぜ間違ったのかが分かっていない以上、的外れな対策になりがちです。
チェック項目すら定まらないからです。

正しい例:発生原因・流出原因をなぜなぜで掘る

同じ案件を、発生原因と流出原因に分けて「なぜ」を繰り返すと、こうなります。

なぜなぜ分析のフロー図。部品取り違えの不良を発生原因と流出原因の2系統に分け、「なぜ?」を繰り返して根本原因(照合ルールの不在)にたどり着く流れを示している

【発生原因】部品を取り違えて支給した
(なぜ→)倉庫管理者が当日休みで不在だった
(なぜ→)代理の人間が部品を持ち出した
(なぜ→)代理者が確認ルールを把握しておらず、間違った部品を現場に支給した
(なぜ→)作業マニュアルがなく、支給前に部品を照合するルールが存在しなかった

【流出原因】組立時に取り違えに気づかなかった
(なぜ→)支給された部品は正しいと思い込んでいた
(なぜ→)今まで支給ミスがなかったから
(なぜ→)使用前に部品が正しいか確認するルールがなかった
(なぜ→)出荷前検査でも付属部品までは照合しないため、気づけなかった

ここまで掘ると、対策も自然に具体化します。

区分対策
発生対策倉庫管理者が不在でも対応できる作業マニュアルを作成。
部品を持ち出す際のチェックリストを作り、支給前の照合をルール化。
現場でも部品表との照合を義務化。
流出対策出荷前検査で部品表と照合して確認。
分解しないと確認できない場合は、組立時に照合した記録が残っているかを確認。

「忙しかったから/ダブルチェック」とは、対策の解像度がまったく違うのが分かるはずです。
発生原因と流出原因のそれぞれに手を打つから、この問題はもう繰り返しません。

📌 今日できる一歩
自社の過去の報告書を1枚見て、原因が「忙しかった」「不注意」「確認不足」で止まっていないか確認しましょう。
止まっていたら、そこから「なぜ?」をあと3回足してみてください。

なぜなぜ分析を成功させる5つのコツ

具体例を踏まえて、なぜなぜ分析を実務で機能させる5つのコツを整理します。
どれも、慣れていない人ほど外しやすいポイントです。

コツ1:問題(テーマ)を具体的に設定する

出発点があいまいだと、結論もあいまいになります。
「不良が多い」ではなく「○月の工程Aでパッケージの取り違えが3件発生した」というレベルまで、何が・どこで・どれだけ起きたかを具体化してから始めましょう。

コツ2:思い込みを捨て、客観的な事実で進める

「たぶんこうだろう」という思い込みが入ると、なぜなぜ分析は成立しません。
推測ではなく、現場で確認できた事実だけを積み上げます。
問題解決のヒントは、机の上ではなく現場にあります。

コツ3:中立的な第三者の目で見る

当事者だけで掘ると、無意識にかばったり、逆に責めたりしてしまいます。
できれば直接の担当者以外も交え、利害から一歩引いた中立的な目で見ること。
これは品質管理として非常に重要なポイントです。

コツ4:発生原因と流出原因を必ず分ける

先ほどの具体例のとおり、「なぜ作られたか」と「なぜ気づけなかったか」は分けて掘ります。
ひとまとめにすると、片方の対策が抜け落ち、再発の余地を残してしまいます。

コツ5:「なぜ」を人ではなく仕組みに向ける

最大のコツであり、次の章のテーマでもあります。
「なぜあなたは間違えたのか」と人に矢印を向けると、出てくる答えは「気が緩んでいた」で止まります。
そうではなく「なぜ間違えられる仕組みになっていたのか」と問えば、ルールやマニュアルの不備という、本当に直せる原因が見えてきます。

📌 今日できる一歩
次に分析するときは、紙の余白に「人ではなく仕組みに矢印を向ける」と一行書いてから始めましょう。
たったこれだけで、出てくる原因の質が変わります。

「なぜなぜ分析はうざい・鬱になる」と言われる理由と、個人攻撃にしない進め方

「なぜなぜ分析」と検索すると、「うざい」「鬱」「パワハラ」といった言葉が並びます。
これは手法そのものが悪いのではなく、使い方を間違えている職場が多いことの裏返しです。

なぜ「うざい・鬱」と感じられてしまうのか

「なぜできなかった」「なぜやらなかった」と人に向けて繰り返すと、それはもう分析ではなく詰問です。
答える側は逃げ場がなくなり、自己嫌悪に迴い込まれます。
これが「鬱になりそう」「吊るし上げだ」と感じられる正体です。

厚生労働省も、ミスの背景にはヒューマンエラー ——「やるべきことが決まっているのに、やらない/やってはいけないことをする」——があると整理しています。
人は好きでミスをするわけではなく、ミスを誘発する環境の中で起きています。
だから責めても再発は止まりません。

個人攻撃・吊るし上げにしないための原則

トヨタの考え方の前提は「人はミスをするものだ」です。
だからミスが起きたら、個人を責めるのではなく「組織として何を変えれば同じミスが防げるか」を全員で考えます。
矢印を人ではなく仕組みに向ける——コツ5そのものです。

具体的には、主語を「あなた」ではなく「この工程」「このルール」にすること。
「なぜあなたは確認しなかったのか」ではなく「なぜ確認しなくても進める工程だったのか」。
これだけで、詰問は分析に変わります。

「難しい・面倒くさい」という本音への回答

正直に言えば、なぜなぜ分析は難しいですし、面倒くさい作業です。
慣れるまでは正しい原因にたどり着けず、練習も必要です。
「思い込みがあると成立しないのでは」という指摘も、まさにそのとおりです。

ただ、面倒だからと「忙しかった/ダブルチェック」で済ませれば、同じ不良が一生繰り返されます。
一度きちんと根本原因をつぶせば、その不良はもう出ません。
手間は最初だけで、長い目で見れば残業も余計な報告書も減ります。面倒な作業を1回やるか、楽な対策を何度も繰り返すか、という選択なのです。

📌 今日できる一歩
分析の場で「なぜあなたは」と言いそうになったら、「なぜこの工程は」と主語を言い換えてみましょう。
場の空気と、出てくる答えの両方が変わります。

私が中国工場で「なぜなぜ分析」で再発を止めた話

ここからは、私自身の経験をお話しします。
中国・東南アジアの工場でベンダー管理・指導をしていた頃の話です。

出荷ミスが何度も再発した現場

当時の中国の工場では、出荷ミスが頻繁に起きていました。
パッケージの取り違え、本体の梱包間違い、梱包数量の不足——種類はさまざまです。

そのたびに工場へ是正処置報告書を書かせていました。
1枚ずつ見れば、原因も対策も間違っていません。
それなのに、似たような問題が年に数回発生してしまうのです。

現地で一緒に「なぜなぜ」で深掘りした

原因を確かめるため、現地へ飛びました。
作業を見ていると、確かに報告書の対策どおりに作業も検査もしている。
それでも再発する。
よく見ると、根本原因の特定そのものが間違っていたのです。

原因がずれていれば、対策も的外れになります。
どれだけ立派な対策を実施しても、不良は発生し、流出します。
そこで工場の人たちと一緒に「なぜなぜ分析」の考え方で深掘りし、根本原因を突き止めて対策を打ち直しました。それ以降、同様の問題は発生しなくなりました。

このとき痛感したのは、原因と対策は一見合っているように見えても、実際には間違っていることが多いということ。
そして「なぜなぜ分析」を知らない人は本当に多い、ということでした。
現地での品質確認の具体的な進め方は、中国工場の品質管理の実態|現地で必ず確認すべき6つのポイントでも詳しく書いています。

失敗談:いきなり「書け」と言って時間を奪った

一方で、これは失敗だったという経験もあります。
ブラック企業で品質管理をしていた頃、製造部門の加工ミスで材料の再手配が必要になり、納期遅れが出ました。
致命的なミスだったので、作業者に「なぜなぜ分析」を要求したのです。

ところが作業者は「なぜなぜ分析」をまったく理解しておらず、的外れな内容ばかり。
こちらが説明して書き直しを求めても、なかなかうまくいかない。
結果として報告書を書くことに時間がかかり、本来の加工の仕事まで圧迫してしまいました。

原因は、私の説明不足でした。
やり方のマニュアルを用意しておくべきだったし、最初に親切に説明しておくべきだった。
あるいは各部署の責任者にまず説明し、責任者の指導のもとで作業者にやってもらう形にすべきでした。相手の理解力への過信は失敗のもとです。

だからこそ、誰でも理解できるマニュアルを用意し、最初は一緒に考えて成功体験を持ってもらうことが大切だと学びました。
一度考え方が身につけば、別の案件にも応用できます。
なぜなぜ分析は、押しつける道具ではなく、一緒に使えるようになって初めて効く道具なのです。

📌 今日できる一歩
チームでなぜなぜ分析を広めたいなら、いきなり「書け」と言う前に、今回の部品取り違えの例を見せながら一緒に1件やってみましょう。
説明より、一緒に手を動かす方が伝わります。

なぜなぜ分析のよくある質問

Q1. なぜなぜ分析は、ミスした人への個人攻撃や吊るし上げになりませんか?

矢印を「人」ではなく「仕組み」に向ければ、個人攻撃にはなりません。
「なぜあなたは間違えたのか」ではなく「なぜ間違えられる工程になっていたのか」と問うのが原則です。
人を責めても再発は止まらず、仕組みを直してこそ防げます。

Q2. 「なぜ」は必ず5回繰り返さないといけませんか?

5回はあくまで目安で、回数が目的ではありません。
3回で真因に届くこともあれば、もっと必要なこともあります。
「これ以上さかのぼれない仕組みの原因」に届いたら、そこが止め時です。

Q3. 思い込みがあると分析が成立しないのでは?

そのとおりで、思い込みは最大の敵です。
だからこそ推測ではなく現場で確認した事実だけを使い、当事者以外の中立的な目を入れます。
一人で机上で完結させないことが、思い込みを防ぐ一番の対策です。

Q4. 製造業以外(サービス業や事務職)でも使えますか?

使えますが、調整は必要です。
なぜなぜ分析はもともと製造現場で生まれた手法なので、「発生/流出」の枠組みはそのまま当てはまらない場合があります。
それでも「事実で掘る」「人ではなく仕組みに向ける」という原則は、どの職種でも有効です。

なぜなぜ分析は「人を責める道具」ではなく「仕組みを直す地図」

是正処置報告書を出しても不良が止まらないのは、原因の掘り下げが浅いか、報告書が目的化しているからでした。
なぜなぜ分析のコツは、①テーマを具体化する、②事実で進める、③中立の目で見る、④発生原因と流出原因を分ける、⑤人ではなく仕組みに矢印を向ける——この5つです。

正しく使えば、なぜなぜ分析は誰かを追い詰める道具ではなく、再発をなくして自分たちの余計な仕事を減らす「地図」になります。
不良が減れば、報告書も残業も減る。
それは現場で消耗しているあなた自身を、少しだけ楽にしてくれるはずです。

まずは1件、手元の不良案件で「なぜ?」をあと3回、仕組みに向けて足してみてください。
その1回が、繰り返してきた不良を止める最初の一歩になります。

次に読むなら

品質改善の考え方を広げるうえで、今のあなたに近いところから読んでみてください。

参考・出典

・大野耐一『トヨタ生産方式』ダイヤモンド社、1978年(「なぜを5回繰り返す」の出典)
厚生労働省 職場のあんぜんサイト「ヒューマンエラー」
厚生労働省 職場のあんぜんサイト「不安全行動」(労働災害原因要素の分析)
ISO9001:2015 箇条10.2「不適合及び是正処置」

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