「どうしてこんな簡単なことができないんだ」。
後輩に資料を渡して説明したのに、同じミスを繰り返されて、帰り道でイライラが止まらない。
人に期待しない方法があれば楽になれそうだけど、冷たい人にはなりたくない。
「きっと現場に喜ばれる」と思って始めた改善が反発されて止まり、絶望した夜もある。
――そんな気持ちを抱えている人も多いのではないでしょうか?
先にお伝えすると、イライラと絶望の正体は同じです。
期待していた結果と、実際の結果のギャップです。
だからイライラや絶望をしないための答えは、人に期待しないことになります。
ただし人に期待しないということは、冷たくなることでも、諦めることでもありません。
「主導権が相手にあること、つまり相手が決めることには、期待しない」と決めるだけです。
自分で決められること、つまり準備や伝え方、確認、といった「自分の行動」は、後悔しないようにやります。
私はブラック企業に約10年勤めた経験者で、現在は東証プライム上場企業の品質管理部門で働く現役会社員です。
台湾に駐在していた頃、現地スタッフや取引先に振り回される毎日の中で、私は人に期待することをやめました。
それからは、相手の失敗でイライラすることが減り、精神的なダメージも小さくなりました。
この記事では、次の5つを順番にお伝えします。
- イライラと絶望の正体
- 私が人に期待するのをやめた理由
- 人に期待しない方法5つ
- 仕事でイライラが止まらない人へ、誰への期待から下げるかの順番
- 「期待しない」を使う場所を間違えないための注意点
それでは、イライラと絶望の正体から確かめていきましょう。
イライラと絶望の正体は「期待値と現実のギャップ」
まずこの章では、イライラや絶望がどこから来るのかを、数字と仕組みの順に確かめていきます。
厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」に、こんな数字があります。
仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は、68.3%。
中身で最も多いのは「仕事の量」ですが、次が「仕事の失敗、責任の発生等」の36.2%で、「対人関係」も26.1%あります。
失敗と、対人関係。
どちらも、「こうなるはず」と思っていたことが、そのとおりにならなかったときに悩みになります。
この記事で扱うイライラや絶望は、ここから生まれます。
では、その感情はどんな仕組みで生まれるのでしょうか?
感情は、期待値と現実の差から生まれる
人は何かを始めるとき、先に良い結果を想像します。
「この提案なら、現場に喜ばれる」。
「これだけ説明したなら、あとは任せて大丈夫」。
この想像が、期待値です。
実際の結果が期待値に届かなかったとき、その差が、イライラや絶望になります。

だから、差を小さくすれば、感情も小さくなります。
期待値を下げておくと、結果がどちらに転んでも損をしません。
表にすると、次のようになります。
| 上手くいかなかった | 上手くいった | |
|---|---|---|
| 期待値が高い | イライラする、絶望する | 「当然」で、喜びは小さい |
| 期待値が低い | 「予定どおり。まぁ、こんなもんだよね」 | 「え、成功した!」と喜びが大きい |
※この表は、「主導権が相手にあること」(相手が動くか、理解するか、評価するか)に当てはめるものです。
自分がやるかどうかを決められることには使いません。
その理由は、この記事の後半の「期待しない」を使う場所を間違えないでお伝えします。
私の話をします。
台湾に駐在していた頃、現場のスタッフに、備品や仕掛かり品の置き場所を決める提案をしたことがありました。
当時は置き場所が決まっておらず、仕事に取りかかる前に、いつも探すところから始まっていたからです。
置き場所を決めて、使ったら決められた場所に戻す。
初歩的な内容で、誰も損をしない提案だと思っていました。
だから、反対されるとは考えてもいませんでした。
ところが、現場のスタッフは賛成しませんでした。
理由は、2つあったと思っています。
1つは、今のやり方を変えたくない、慣れているやり方から変更するリスクを背負いたくない、というスタッフの気持ちです。
もう1つは、通訳の問題です。
当時は、日本語のできる現地スタッフが通訳を兼ねていました。
ただ、私の意図した内容を、現地スタッフに伝えることができませんでした。
その夜は、なぜ賛成してもらえないのか、説明のどこが悪かったのかを、ずっと考えていました。
すごくイライラしていたのを覚えています。
結果として、提案した置き場所は決まらないままでした。
それだけではありません。
「ややこしいことを提案する人」と見られたのか、それ以降、私の意見は通りにくくなりました。
「当然できるはず」と思っていた分だけ、落ち込みも大きかったのです。
この出来事のあと、私はもっと伝わりやすい方法を考えるようになりました。
同じ職場で、別のイライラもありました。
台湾の職場は、誰かの失敗を、最終的に全部私が処理しなければならない環境でした。
現地スタッフが失敗するたびに、私はイライラしていました。
「これくらいはできるだろう」と、相手に期待していたからです。
提案に賛成するかどうかは、現場のスタッフが決めること。
任せた仕事ができるかどうかも、任されたスタッフが決めること。
当時の私は、どちらも相手に主導権があることに、高い期待値を置いていたのです。
あなたが最近、イライラした場面と絶望した場面を、1つずつ思い出してみてください。
その場面で、何が「こうなるはず」だったのでしょうか?
その「はず」を誰に向けるかが、この記事のテーマです。
期待しないは、冷たさでも諦めでもない
「期待しない」と聞くと、相手を突き放すように聞こえるかもしれません。
部下を見捨てるようで、罪悪感が出る人もいるでしょう。
ここで、言葉を2つに分けます。
期待とは、「こうしてくれるはず」と、結果を相手に求めることです。
信頼とは、相手を一人の人として大事にする態度のことです。
この記事で手放すのは、「相手への期待」のほうだけです。
信頼や関心、そして提案したり教えたりする機会は手放しません。
提案はする、教える、確認もする。
そのうえで、相手が動くかどうかは相手に任せます。
これが、この記事でいう「人に期待しない」です。
相手に任せるのは、結果だけです。
自分の側の準備や伝え方、確認の回数は、自分が後悔しないように実行します。
そこを手抜きすると、「期待しない」が「どうせ無理」という諦めに変わってしまいます。
期待しないことと諦めることの違いは、このあとの「期待しない」を使う場所を間違えないで、もう一度整理しましょう。
言うことを聞かない部下に、どこまで関わればいいのかと悩む人もいるでしょう。
「言うことを聞かない部下に疲れた管理職へ|課題の分離という選択」で「放置」と「課題の分離」の違いを表で整理しているので、参考にしてみてください。
次の章では、私がどの出来事をきっかけに、人に期待するのをやめたのかをお伝えします。
私が人に期待するのをやめた理由
人に期待するのをやめたのは、きれいな考え方にたどり着いたからではありません。
期待したままでは、自分の心が持たなかったからです。
この章は、相手に主導権があることの話です。
任せた仕事の出来は、相手が決める
仕事を任せたとき、その仕事ができるかどうかを決めるのは、任された相手です。
こちらがどれだけ丁寧に説明しても、相手の理解のペースと、やる気は、こちらではコントロールできません。
当たり前のことですが、当時の私は分かっていませんでした。
きっかけは、台湾での仕事です。
先ほどお伝えしたとおり、台湾の職場は、誰かの失敗を最終的に全部私が処理しなければいけない環境でした。
あるとき、社内の工程を管理する仕事の一部を、私より先にその工場で働いていた現地スタッフに任せることになりました。
そのとき私は、「どうせ失敗するだろう」と思いながら任せました。
そして、失敗した場合の備えを、先に取っておいたのです。
備えは、3つです。
・自分でやり直す時間を先に確保しておく。
・納期に余裕を持たせておく。
・途中で一度、見せてもらう。
実際に失敗しても、イライラは少なかったです。
予定どおり失敗した、備えも取ってある、それだけだったからです。
任せなければ、もともと私がやる仕事でした。
失敗して自分でフォローしても、仕事の量が増えたわけではありません。
逆に、失敗しなかったこともありました。
そのときは、素直にラッキーだと思いました。
これが、私が人に期待するのをやめたきっかけです。
相手の考えは、自分ではどうにもできません。
だから、相手が反対する、失敗する、という前提で話すようになりました。
私が提案やアドバイスをするかどうかは、自分の課題(自分が決めること)です。
でも、それを受けた相手が行動に移すかどうかは、相手の課題(相手が決めること)。
自分の行動には後悔のないようにして、相手への機会は減らさない。
それでも結果には期待しないことで、自分が受ける精神的なダメージは最小限になりました。
教え方そのものに不安がある、という人は、「部下育成は何から始める?初めて後輩を教える人が押さえる5つの基本」も参考になると思います。
任せる前の準備として、教えることを先に書き出す方法を紹介しているので、読んでみてください。
水を飲むかどうかは、馬が決める
「馬を水飲み場まで連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」。
英語のことわざです。
水飲み場まで連れて行くのは、こちらの仕事。
飲むかどうかは、馬が決めます。
仕事に置き換えると、教える、機会を作る、確認する、までがこちらの仕事です。
それを受け取って動くかどうかは、相手が決めます。
この線引きは、アドラー心理学の「課題の分離」と同じ考え方です。
自分の課題と相手の課題を分けて、相手の課題には踏み込まない、という考え方です。
分ける基準は、結果を最終的に引き受けるのは誰か。
かつての私の職場のように、失敗の後始末が自分に回ってくる場合もあります。
そのときは、後始末の備えを取ることが、自分の課題になります。
それでも、相手が動くかどうかは相手の課題です。
この線引きがあると、時間の使い方も変わります。
変わる気のない相手に、何度も同じ説明をして消耗することが減るからです。
その分の時間を、変わる気のある相手や、自分の仕事に使えます。
ただし、教える、機会を作る、確認する、のところで手を抜いてはいけません。
そこを省くのは、課題の分離ではなく、放置もしくは放棄です。
次の章では、この線引きを毎日の仕事で使うための方法を、5つに分けてお伝えします。
人に期待しない方法5つ|「期待」を「主導権」で仕分ける
「期待しない」と頭で分かっていても、同じ相手に同じ場面でイライラしてしまう人も多いのではないでしょうか?
この章では、毎日の仕事で使える方法を5つお伝えします。
覚えることは1つだけ。
「主導権がどこにあるか」で仕分けることです。
先に、仕分けの見本を表にします。
同じ場面を、自分の課題と相手の課題に分けたものです。
| 場面 | 自分の課題=自分で決める | 相手の課題=期待しない |
|---|---|---|
| 後輩に仕事を任せる | 教え方、確認のタイミング | 任せた仕事の出来 |
| 改善を提案する | 伝え方、相手のメリットの説明 | 相手が賛成するか |
| 評価・昇給 | 自分の勉強、社外で通用する実績 | 上司の評価、昇給や昇格 |
| 取引先・海外工場 | 訪問して確認する、指摘する | 現場が改善するか |
| 会社の制度 | 転職活動を始める | 会社の制度そのもの |
相手の課題の列は、全部、相手が決めることです。
そして自分の課題の列は、全部あなたが今日から動かせることです。
では、5つの方法を順番に見ていきましょう。
①主導権がどこにあるか、紙に書く
最初の方法は、今イライラしている案件を、先ほどの表と同じように、自分の課題と相手の課題の2列に書き出すことです。
頭の中だけで仕分けようとすると、相手への期待が自分の課題の列に紛れ込みます。
紙に書くと、紛れ込みに気づけます。
書くときの決まりは1つです。
「相手の反応」は、必ず相手の課題の列に書きます。
「後輩が資料を読むか」「上司が提案を認めるか」「現場が計画どおりに動くか」。
これらは全部、相手が決めることです。
自分の課題の列には、その案件で自分が動かせることを書きます。
「資料の順番を変える」「提案の前に上司の関心を聞いておく」「計画に予備日を入れる」。
自分の課題の列が埋まれば、明日やることが決まります。
②動かない前提で、備えを先に取る
2つ目は、仕事を任せるときの前提を変えることです。
「きっとやってくれる」ではなく、「相手は動かないだろう」の前提で任せます。
そして、動かなかった場合の備えを、任せる前に取っておきます。
最初の章の期待値の表でいえば、低い期待値の行に自分を置く、ということ。
台湾で生産管理を担当していた頃、私は生産計画を立てて、現場に指示を出していました。
ただ、計画どおりに進むほうが稀でした。
崩れる理由は、いくつもあります。
上司の方針で現地スタッフに残業をさせてはいけない。
仕入れた材料に不良が見つかる、外注先で加工ミスが起きる、仕入れ品の納期が遅れる。
事前に問題を潰しても、1つ解決すると別の問題が出てくる状態だったのです。
だから私は、計画どおりには進まない前提で、計画を立てるようにしていました。
現場が私の立てたスケジュールどおりに動けば、ラッキー。
動かなければ、予定どおり。
どちらに転んでも、私の心は大きく動かなくなりました。
「上手くいかなくてもいいや」の対象は、相手や環境などの「自分のコントロールが及ばない範囲」の結果です。
自分の準備、伝え方、備えは、自分が後悔しないように実行するようにしましょう。
先ほどは備えの例として下記の3つを紹介しました。
・自分でやり直す時間を先に確保しておく。
・納期に余裕を持たせておく。
・途中で一度、見せてもらう。
どの準備をするか、3つとも全部必要かどうかは状況によります。
やり直す時間が取れないなら、途中で一度見せてもらうだけでも、失敗は小さいうちに見つかります。
③察してもらわず、伝えて確認する
3つ目は、相手に察してもらうのをやめて、こちらから伝えて、確認することです。
「言わなくても分かるはず」は、相手の理解に期待している状態です。
相手の理解は、相手の課題の列。
こちらで動かせるのは、伝え方と確認のほうです。
今の仕事では、海外の工場を監査して、問題のある点や改善できる点を指摘しています。
そのとき私が気をつけているのは、相手のレベルに合わせて言葉を選ぶことです。
相手の理解度が低い状態なら、できるだけかみ砕いて、身近なたとえ話も織り交ぜて説明します。
逆に、ある程度の前提知識がある相手に同じ話し方をすると、失礼に当たってしまう場合もあります。
相手の状況に合わせて、負担の少ない方法を選び、相手にとってのメリットも伝える。
相手が動くことに抵抗がなくなる状態を作るところまでが、自分の課題だと考えています。
伝えたあとは、確認です。
以前の台湾工場で勤務していた時は、取引先を定期的に訪問して、納期や、話し合った改善が現場で実行されているかを確かめていました。
訪問そのものが、相手にとって「確認される機会」になります。
「やってくれるはず」と待つのではなく、自分から確認の予定を先に入れておくのです。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」。
旧日本海軍の山本五十六の言葉として伝わる一節です。
私もこの順番で伝えるようにしています。
ただし、ここまでやっても、相手が動くかどうかには期待しません。
動かなかったときの備えは、別に取っておきます。
④自分で動かせることを1つ増やす
4つ目は、相手の失敗が起きるたびに、自分の側でできることを1つ増やすことです。
相手を変えようとするのではなく、相手がそのままでも結果が変わる仕組みを足します。
ブラック企業時代の私は、「周りのせいで仕事が進まない」と考えていた時期がありました。
そこから、考え方を切り替えました。
「あの人でも分かるように注意書きを増やそう」「納期の3日前に声をかけよう」と、自分の側で打てる手を増やす考え方です。
相手は変わっていないのに、仕事の質は上がり、感情的になることも減っていきました。
増やすのは、1回に1つで十分です。
注意書きを1行足す。
締め切りの前に1回声をかける。
確認の日を1日入れる。
どれも、相手の了解がいらない、自分の課題の列の行動です。
⑤変わる気を見て、時間を決める
5つ目は、相手に変わる気があるかどうかで、かける時間を変えることです。
変わる気のある相手には時間をかけ、変わる気のない相手には時間をかけすぎない。
海外の工場を監査していると、指摘に対して返事だけして、報告書を取り繕い、本質的な改善はしない工場に出会います。
私の担当範囲の話ですが、そういう工場は少なくありませんでした。
改善指導はしますが、実際に改善するかどうかは相手の課題なので、私は期待しないようにしています。
一方で、こちらの考えを理解しようとして、一生懸命に改善に取り組み、報告してくれる工場もあります。
そういう工場に出会えたときは、この工場と一緒に頑張ろう、一緒に改善に取り組もう、と思います。
時間をかけるのは、こちらです。
台湾工場に勤務していた時にも、似たことがありました。
現場の作業者だった人が、品質管理に抜擢されたことがあったのです。
それまでは指示された作業をするだけの人でしたが、品質管理になってからは、向上心を持って勉強している姿が見られました。
以降、その人には、ある程度の仕事を任せられるようになりました。
変わる気のある相手には、確認と教え方に時間をかける。
変わる気のない相手には、時間をかけすぎない。
📌 今日できる一歩
今、特にイライラしている案件を1つ選び、紙を2列に分けて書き出してみてください。
右の列に「相手の反応」を、左の列に「自分が動かせること」をそれぞれ1つ以上。
左の列の1つが、明日の仕事です。
仕事でイライラが止まらない人へ|期待を下げる順番

仕事でイライラが止まらないとき、相手は1人ではないことが多いものです。
部下にも、上司にも、会社にもイライラしている、という人もいるのではないでしょうか?
この章では、部下、上司と会社、の順に期待を下げる方法をお伝えします。
最後に、期待を下げてもイライラが続くときの見方を添えます。
部下には、教え方と確認を自分の課題にする
最初に下げるのは、部下や後輩への期待です。
理由は、毎日顔を合わせる相手で、イライラの回数がいちばん多いからです。
部下に期待しないことは、見捨てることではありません。
「できるかどうか」は相手の課題として任せ、「教え方」と「確認」を自分の課題として受け持つことです。
具体的には、確認の回数を増やします。
「分からなかったら聞いて」と言って待つのは、相手の課題に期待している形です。
「ここまでやったら一度見せて」と、確認するタイミングをこちらから決めておきます。
任せるときは、期限と、どこまでできていれば合格かを、具体的に伝えます。
「いい感じに頼む」では、相手の理解に期待している状態です。
期限と合格の形を伝えて、途中で一度見せてもらう。
見せに来ないときは、こちらから見に行きます。
確認の予定を自分の手帳に入れておくことが、タイミングを自分で決める、ということです。
ここまでが、こちらの課題です。
指示待ちの部下を動けるようにする関わり方について、もっと詳しく知りたい人もいると思います。
「指示待ち人間の特徴と接し方|部下が動かない原因と育て方のコツ」でまとめていますので、参考になさってください。
📌 今日できる一歩
明日、部下や後輩に仕事を渡すとき、「ここまでやったら一度見せて」と一言足してみてください。
相手ができるかどうかではなく、確認のタイミングを、あなたが決めるのです。
上司と会社には、評価を求めない
次に下げるのは、上司と会社への期待です。
頑張って成果を出せば、評価され、給料が上がるはず。
この期待が外れたときの落差は、部下への期待よりも大きく感じます。
部下への期待は毎日の小さな場面で外れますが、評価への期待は、年に一度の人事でまとめて外れるからです。
ブラック企業時代の私は、社長や営業部門に対して、特にイライラしていました。
昇進や昇給の発表は、いつも営業部門が中心。
自分なりに努力をしても、毎年の人事発表は同じ結果で終わりました。
そのころの私が期待をかけていた先は、「社長の評価基準が変わること」だったのです。
評価も、昇給も、昇格も、決めるのは会社です。
仕分け表でいえば、右側(相手の課題)の列にあります。
ここに期待を置き続けても、結果はあなたの期待どおりには変わりません。
上司や会社に期待しないなら、なぜ会社に残るのか、と思う人もいるでしょう。
期待しないことと、諦めて残ることは別です。
評価そのものは会社が決めますが、評価してもらえる材料を作ることは、自分で決められます。
そして、社内の評価と、社外で通用する力は別のものです。
だから自分の課題の列に置くのは、社外でも通用する力を作ること。
自分の勉強、社外の人にも説明できる実績、そして転職活動を始めることです。
評価を求めるのをやめたあと、腐らずに何をすべきかは、「出世できないとわかったら?腐らずに人生を立て直す5つの選択肢」に5つの選択肢として整理して紹介しています。
興味のある方は読んでみてください。
それでもイライラが続くなら、環境を疑う
期待の置き場所を変えても、イライラが続くことはあります。
その場合、原因は環境のほうにあるかもしれません。
ブラック企業時代の私は、一日中、会社のほとんどの人にイライラしていました。
サービス残業は月100時間を超え、帰宅後は毎日ビールを飲まないと眠れませんでした。
それは台湾工場で勤務していた時も同じでした。
現地スタッフだけでなく、納期を守らない取引先や、約束した品質を守らない取引先にも、心の中でイライラしていました。
転職して、相手に対するイライラは格段に減りました。
今の職場は、一定の水準で仕事ができる人がそろっていて、出てくる仕事の質も常に一定以上だからです。
私の性格が変わったのではありません。
環境が変わったのです。
これは私の場合の話で、転職すれば誰でも同じになるわけではありません。
ただ、期待値を下げても毎日イライラが止まらないなら、環境のほうに原因がある可能性はあります。
自分の会社がそれに当たるのでは、と感じる人もいるかもしれません。
「辞めるべき会社のサイン12選|見切りをつけるタイミングと判断基準」で見分けるサインを整理しているので、参考にしてみてください。
「期待しない」を使う場所を間違えない
ここまでは、相手に主導権(相手の課題)があることの話でした。
この章は、自分に主導権(自分の課題)があることの話です。
「期待しない」を自分の課題にまで広げてしまうと、楽になるどころか、冷たい人や諦めた人になってしまいます。
期待しない人は冷たい?優しい?
「人に期待しない」を試した人の声には、上手くいかなかった例もあります。
人に興味が持てなくなった、相手を見下すようになった、本気で怒ることも喜ぶこともなくなった気がする。
Q&Aサイトには、上記のような相談も投稿されていました。
「興味が持てない」「怒りも喜びもない」の2つに共通しているのは、期待と一緒に、関心まで手放してしまったことです。
手放すのは「結果の要求」だけで、相手への関心、確認、教え方は手放しません。
期待だけ手放して、関心を残している人は、相手を思いどおりに動かそうとしない分、穏やかに見えます。
関心まで捨てた人が、冷たく見えるのです。
見下すようになった、という声は、期待を「どうせあの人はできない」という評価に変えてしまった例だと思います。
この記事の「期待しない」は、相手の能力を低く見ることではありません。
相手が決めることを、相手に任せることです。
分かれ目は、確認と声かけを続けているかどうかにあります。
すでに起きたことや他人の評価が頭から離れない、という悩みには、期待とは別の仕分けが必要です。
その仕分け方については、下の記事で詳しく紹介しています。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
自分には「期待」も「どうせ」も使わない
自分の行動は、自分の課題です。
やるかどうかを自分で決められるので、そこには期待という考えがそもそもありません。
あるのは、「決める」だけです。
ゴールを決め、始めることを決め、ゴールへ到達するやり方を決め、途中で失敗したときにどう向き合うかを決める。
自分の課題で失敗したときは、「自分がダメだった」ではなく、「努力の量か、方法か、想定が足りなかった」と考えます。
原因が分かれば、直せます。
直すかどうかも、自分の課題です。
失敗しても続けていいのか迷う、という人は、「自信をつける方法|自信がない自分を変える小さな一歩の踏み出し方」も参考になると思います。
失敗を成功までの一本道の途中にあるものとして扱う考え方を紹介しているので、読んでみてください。
ここで、「どうせ」の使い方を整理します。
「どうせ相手は動かないだろう。でも提案はするし、備えも取る」。
これは相手の課題に向けた「どうせ」で、この記事でいう期待しないことです。
失敗のダメージは小さく、成功したときの喜びは大きくなります。
「どうせ自分がやっても無駄だから、やらない」。
これは自分の課題に向けた「どうせ」で、諦めです。
同じ言葉でも、向ける先が「相手が動くか」なら期待しないこと、「自分がやるか」なら諦め。
この違いさえ守れば、期待を手放しても、頑張る理由は無くなりません。
転職後の私は、この分け方で動いています。
今の職場では、相手にイライラすることが格段に減りました。
その代わり、自分自身が周りの足を引っ張っていないか、任された仕事を求められた以上の形で達成できているか。
そこは自分の課題なので、自分が後悔しないように取り組んでいます。
期待しない生き方は、逃げではなく選び直し
期待しない生き方は、諦めて楽になる生き方ではありません。
期待の置き場所を、自分で選び直す生き方です。
そして低い期待値には、もう1ついいことがあります。
「え、成功した!」が増えることです。
台湾で任せた仕事が失敗しなかったとき、私は素直にラッキーだと思いました。
現場が計画どおりに動いた時も、同じです。
期待していれば「当然」で終わっていたことが、期待しないと、嬉しいことに変わります。
ここで、リルート思考という考え方をお伝えします。
これまでの選択の結果として今の自分がいて、これからの選択で未来が決まる。
カーナビと同じで、現在地からいつでもルートは引き直せる、という考え方です。
期待の置き場所も、今日から引き直せます。
これまで相手に置いていた期待は手放して、自分の課題には「決める」を置く。
ゴールを決め直し、自分が動かせること(仕分け表の自分の課題の列)を増やす。
それで変わらない環境なら、環境そのものを選び直すこともできます。
環境を選び直すかどうかを決めるのも、これまた自分の課題なのです。
会社に期待するのをやめて環境を選び直す道について、もっと詳しく知りたい人は、「転職が怖い・不安で動けない人へ|転職活動だけならノーリスク」でまとめていますので、参考になさってください。
📌 今日できる一歩
明日の仕事を1つ選んで、「上手くいかなくてもいいや」と思ってから始めてみてください。
準備は後悔しないように、結果は相手に任せる。
上手くいったら、「ラッキー」と言ってみましょう。
人に期待しない方法について、よくある質問
Q1. 人に期待しないと、どうなりますか?デメリットはありますか?
イライラや絶望が減り、上手くいったときの喜びが大きくなります。
一方で、期待と一緒に関心まで手放すと、人に興味が持てなくなり、人間関係が薄くなります。
手放すのは「結果の要求」だけで、相手への関心、確認、教え方は手放さないでください。
Q2. 期待しないことと諦めることの違いは何ですか?
違いは、「どうせ」を向ける先です。
「どうせ相手は動かないだろう。でも提案はする」と、相手の課題に向けるのが期待しないこと。
行動は後悔しないようにやって、結果だけ相手に任せます。
「どうせ自分がやっても無駄だ」と、自分の課題に向けた瞬間、それは諦めになります。
自分の課題にはゴールを決めて、失敗は途中の一つとして扱えば、諦めは必要ありません。
Q3. アドラー心理学の「期待しない」「課題の分離」とは何ですか?
課題の分離とは、自分の課題と相手の課題を分けて、相手の課題には踏み込まない考え方です。
分ける基準は、結果を最終的に引き受けるのは誰か。
アドラー心理学で「期待しない」と言われるのは、相手が決めることを相手に任せる、という意味です。
出典は『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健 著、ダイヤモンド社)。
この記事の「主導権が相手にあることには期待しない」は、同じ考え方を仕事の場面に置き換えたものです。
部下との関係に特化した実践については、「言うことを聞かない部下に疲れた管理職へ|課題の分離という選択」で詳しく紹介しています。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
まとめ:主導権が相手にあることには、期待しないと決める
最後に、この記事の要点をまとめます。
- イライラも絶望も、期待値と現実のギャップから生まれる。期待値が低ければ、どちらに転んでも損をしない
- 期待しないのは、主導権が相手にあること(相手の理解、任せた仕事の出来、評価、昇給)だけ。信頼と関心は手放さない
- 方法は5つ。紙に書いて分ける、動かない前提で備えを取る、伝えて確認する、自分の手を1つ増やす、変わる気を見て時間を決める
- 期待を下げる順番は、部下、上司と会社。それでもイライラが続くなら、環境を疑う
- 自分の課題には「期待」も「どうせ」も使わない。ゴールを決めて、後悔しないように実行する
人に期待するのをやめてから、仕事に手を抜くようにはなっていません。
変わったのは、先に備えを取る習慣と、結果を待つあいだの心の動きです。
備えを先に取るようにしてから、相手の失敗で一日を台無しにすることが減りました。
紙を2列に分けて、今イライラしている案件を1つ書き出すところから始めてみてください。
右の列に書いた「相手の反応」は、今夜はもう考えなくていいことです。
左の列に書いた1つが、明日のあなたが決められることです。
次に読むなら
- 部下との関係に特化した実践を知りたい方は:「言うことを聞かない部下に疲れた管理職へ|課題の分離という選択」
- 評価や昇給への期待を手放したあとの選択肢を知りたい方は:「出世できないとわかったら?腐らずに人生を立て直す5つの選択肢」
- 考え方の向きごと変えたい方は:「ポジティブになる方法7つ|人から好かれて人生で得する考え方」

